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良い声を出すための「正しい、立ち方」とは?

姿勢は、良い声を出すために重要な要素の一つです。

歌手や、舞台俳優さんなどで、猫背の人を思い出すことができるでしょうか?
プロとして活躍されている方々は、みなさん背筋が伸びた良い姿勢をなさっているのが分かることと思います。

猫背になると、肺や腹腔が圧迫されて空気を送り込める量が少なくなってしまいます。

声を出す要素の一つである「息」は、姿勢が悪くては十分な量を確保することができません。
ですから、背筋を伸ばした姿勢は、声量のある声を出すのにとても大切である、ということは言えると思います。

基本的に、歌唱や発声のために良いといわれる姿勢は、

・両足を肩幅程度に開いて、つま先はほんの少し外向けにして、ひざを伸ばして立つ
・背筋は伸ばし、お腹を気持ち前に出すような感じで重心は、やや、うしろ
・頭のてっぺんから、上に吊り上げられているようなイメージ

などと言われます。
声を出すときは、あごは少々上げ気味にするように指導される先生もいらっしゃいます。

声は、お腹から、体の中心をとおって、頭のてっぺんから抜けるイメージで出す、というのがクラッシックなどでよく言われる発声です。
息は口から出ていくけれど、声は上から抜けていくような感覚で発声する、と言われるとなんだか、難しいような感じがしますね。
しかし、このようなイメージで行う発声が、喉の奥から体の内部でよく響いて出る声なのだそうです。

声は、体の中の空洞を反響して外部へと出ていきます。
言ってみれば、スピーカーの箱に当たる、反響箱の役割を体内の空洞部分が果たしているわけです。
日本人を含むアジア人は、生来、腹腔、胸郭が欧米人と比べると小ぶりなので、その点は不利だという意見もあります。
背の低い人より、高い人のほうが、痩せた人より、太った人のほうが、有利な一面はあるかもしれません。

しかし、たとえ体格的には発声に適した、恵まれた体を生まれ持っていたとしても、前述のように、猫背のまま声を出そうとすると、肺や、腹腔などの肝心の部分が内臓に圧迫されて狭まってしまいます。
呼吸のための横隔膜や胸郭の可動範囲も小さくなり、大きな声を出すのに足るだけの空気を吸い込むことも難しくなります。

この状態では、たとえトレーニングされた人であっても、十分な発声をすることはできなくなってしまいます。

正しい姿勢は、体の中に、声を反響させる十分なスペースをあけるとともに、声を出すための原動力となる筋肉の運動や、呼吸の量を十分確保できる姿勢であるとも言えるでしょう。

ボイストレーニングと発声練習、って別のもの?

ボイストレーニング、という言葉を聞くと、
「歌手の人がやるやつでしょ?」とか、
「舞台役者さんがするもの?」といった返事がかえってきます。

また、「発声練習とは違うもの?」という疑問も生まれるようですね。

厳密に言えば、発声練習もボイストレーニングの1種ですし、
役者さんが行うものも、歌い手さんがするものも、
広い意味ではボイストレーニングの一つです。

広義の「ボイストレーニング」とは、
「発声練習」と、ほぼ同じ意味となり、
「魅力的な声を出すためのトレーニング」という意味になると思います。

声というものは、発生するときの
姿勢や、呼吸、筋肉の使い方などで変化するものであり、
また、一人一人、声には「声紋」と言われる異なった特徴があります。

「その人らしく、かつ、より魅力的な声を出すためのトレーニング」が、
広い意味のボイストレーニングであり、発声練習であるといえます。

ただし、個々の分野での必要とされる
ボイストレーニング(ないし、発声練習)となると、
ちょっと、事情が変わってきます。

歌い手さんや、舞台俳優さんなどの役者さんは、
「大きな声を出す」という意味では、どちらも似たニーズをお持ちですが、
その、声の「質」や「表現方法」には、かなりの違いがあります。

また、同じ歌い手さんでも、
クラッシック歌手の方と、ポピュラーミュージックでは、
表現方法が全く違っているため、必要なトレーニングは異なります。

一説では、
役者やクラッシックで必要になるのが「発声練習」、
ポピュラー音楽でやるのが「ボイストレーニング」
と呼び分ける方もいらっしゃるようです。

確かに、「ボイストレーニング」の示すトレーニング内容は、
伝統的な発声練習と比較して、
「より、個性的な、その人らしさ」
「医学的な見地や、時代背景の違いによる表現方法の変化」などの、
広い範囲での個性も含めた総合的な発声方法へのアプローチ、
という印象が強いように思います。

ポピュラーミュージックの場合、
時代とともに変化していくスピードが速いことから、
トレーニングの内容は、伝統的要素と、
まったく新しいニーズの両方が混在している部分もあるようです。

ボイストレーニングは全身を鍛えよう

仕事上、演劇で飯を食っていこう、歌で生業にして生きていこうとしている人たちは山のように見て来ました。
そういった人たちの99.9%は夢半ばにして諦めるか、自分から去っていきます。
誰がものになるかは良くわかりませんが、ものにならない連中はすぐにわかります。
彼らはほぼ例外なく、ボイストレーニングを疎かにしているからです。

ボイストレーニングは歌や演劇をするための基礎中の基礎です。
ベースボールでいえばキャッチボールのようなものと言って良いでしょう。
今時の歌手・役者志望者はテレビや動画サイトなどで上手い人をよく研究しているので小手先のテクニックはあります。
日常会話をする時の声量だったらプロ相手でもそうそう引けは取らないでしょう。

しかしそんな声量では金が取れる歌手や役者には絶対になれないのです。
自分の肉体を楽器として表現するのが歌手であり役者なのです。
貧弱な楽器で良いメロディを奏でることが出来る訳ありません。

さてボイストレーニングというと誰しも連想するのが腹式呼吸ではないでしょうか。
腹式呼吸は簡単に言うと、息を吸う時にお腹を膨らませて、吐く時にお腹をへこます呼吸法です。この呼吸法を続けることで、歌やセリフを言う時に喉を痛めずにパワフルに表現することができます。

実はこの腹式呼吸ですが、欧米人は生まれながらに腹式呼吸なのです。繁華街などですれ違った欧米人旅行者グループの声が大きく聞こえるのは異国語だからというだけでなく、腹式呼吸でしゃべっているからです。
欧米人の歌手や役者の声が伸びやかで大きいのは、腹式呼吸が完全に出来ているからなのです。

腹式呼吸を覚えるのと同時に身体を鍛えることも必要です。
声を出すために必要な腹筋を鍛えるのは当然として、できればマラソンなどで持久力を付けておくと良いでしょう。
正確な腹式呼吸を出し続けるのは持久力が必要だからです。持久力が付けば、声量のコントロールもやりやすくなります。

あとできればお風呂上りにストレッチなどをして身体を柔軟にしておくと良いです。身体が柔らかい方がスムーズに声を出すことができるからです。
特に首や顔の筋肉を柔らかくしておくと発声練習の効果が出て、喉を痛めることも少なくなります。

以上のことをひっくるめますと、ボイストレーニングに一番必要なのは基礎体力です。
全身運動や柔軟体操などでしっかりした身体を作ることで、ボイストレーニングは生きるのです。